教育に関しては、小林(2005)が韓国の日本語教科書を調査し、現在の日本語教育における述語否定形の扱いについて、原則として「~ません」が提示されているが、イ形容詞には「~ないです」形が多用されているという傾向を指摘した。同じ韓国の教科書を調査した研究は澤邉・相澤(2008)にもあり、初級の一部の教科書に動詞の「ないです」形を認めて説明を加えるものがあることを示した。中国の場合、張(2015)が中国で出版されている日本語教科書7種類、22冊を対象に調査を行い、動詞否定丁寧形「~ません」形は全ての教科書において提示されているが、「~ないです」形は会話教科書『新編日本語生活会話』1冊の4例だけに限定されているという、韓国の教科書と同じような結果が分かった。
2。2 本研究の立場文献综述
以上の先行研究から、二つの疑問を抱き、それらをもとに本研究の立場を説明する。
まず、否定丁寧形の使用実態への疑問である。否定丁寧形の使用実態に関する調査は野田(2004)と川口(2006)がある。しかし、野田は日本人大学生に「ません」と「ないです」の使用について、自然かどうかだけを尋ねた。それと同様に、川口は日本語母語話者に「ません」と「ないです」この二つの言い方が正しいかどうかを判断してもらっただけである。「ません」と「ないです」両方とも自然、もしくは正用だと思っている人は少なくないということから、どちらのデータも日本人の実際の使用傾向とは言いにくく、規範意識に近いものに過ぎないと言えよう。
そして、日本語学習者を対象とした調査がいくつかあるが、韓国人は多数を占めており、中国人学習者への調査はほとんど見当たらず、何人かのデータしかなかった。
この二つの問題から、本論では先行研究を踏まえ、日本語母語話者と中国人日本語学習者を対象に、日常会話での否定丁寧形の使用実態についてアンケート調査を行い、日本語母語話者と中国人学習者の結果比較研究し、考察を進める。
3。 「ません」と「ないです」に関する使用実態
先行研究により、現代日本語における否定丁寧形の規範は「~ません」形であること、また、その規範に「ゆれ」が存在していること、更に海外の学習者にも影響を及ぼしていることが分かった。本調査では、若年層へのアンケートにより、以下の3点を明らかにしたい。
①日本人母語話者の間に見られる否定丁寧形はどの程度「ゆれ」ているか;
②海外における学習者の中で、中国人学習者にのみ焦点を絞り、どのような影響を受けているのか;
③学習者に見られる傾向は、学習者自身の日本語能力とどのような関係があるのか。
3。1 調査方法と調査対象来*自-优=尔,论:文+网www.youerw.com
2015年12月一か月をかけ、中国の杭州師範大学における日本語学習者(以下NNS)135名と日本の金城学院大学における日本人大学生(以下NS)70名、中国人留学生(これらもNNSに属することにする)12名を対象に、アンケート調査を実施した。得られた有効回答数はNS58名、NNS115名合計173名である。そのうち、NNSの全員に日本語能力測定テストSPOT90[1]を行い、得られた結果により、初級34名、中級54名、上級27名という三つのグループに分けた。レベル分けの基準は下記の表1に示す。アンケートの内容は「日常会話の中で、決められた会話中に『ません』と『ないです』のどちらを使う傾向があるか、より自然だと思っている選択肢を選ぶ」という文法判断テストである。選択の影響となる後接要素や動詞のヴォイスやテンスを考えず、前接する品詞別のみで、名詞、イ形容詞、ナ形容詞、動詞に分類する。また「かもしれません―かもしれないです」、「なければなりません―なければならないです」などは、否定の意味を持っていないが、「ません」と「ないです」の対応があるため、調査の対象となる。 关于礼貌体否定形「ません」和「ないです」使用情况的调查研究(3):http://www.youerw.com/riyu/lunwen_82368.html