この作品は第1次稿から第4次稿まで三回にわたって大きな改稿が行われた。また、この作品は宮沢賢治の遺作のため、未定稿のまま刊行され、また多数の造語が使われ、読者の中にも様々な解釈が伝われている。この神秘さも『銀河鉄道の夜』の魅力を増すのだろう。
『銀河鉄道の夜』は銀河を舞台にし、数多くの星座が文章の中に言及された。文章の最後の部分に出てきた「さそりの火」も、文章の主旨に深く関われると思われる。『銀河鉄道の夜』は童話であるからして、筆者は物語の内側の深い意味より、作品をより一層楽しめるため、作品の中の星座とその象徴や意味について研究したい。その上に、宮沢賢治にとって「星」の意味も見つけ出したい。
2。先行研究
宮沢賢治は短い一生の中、発表した作品は少ないが、数多くの遺作を残した。彼の全部の作品の中、星に関するものはよく見られる。本論文が研究する『銀河鉄道の夜』を代表に、他にも童話『烏の北斗七星』『よだかの星』や、詩『星めぐりの歌』『双子の星』などの作品がある。草下英明の『宮澤賢治と星』は宮沢賢治が作品の中に描かれた星についての研究書で、主の内容は星の種類や関連する天文知識などである。草下英明の統計によると、宮沢賢治の作品の中には、「七〇四ヵ所に天体に関する記述が見られる」。その中、「星」・「月」・「銀河・天の川」・「さそり座」・「オリオン座」・「すばる星」などが頻度の最も高い記述としてあげられた。『銀河鉄道の夜』だけでも、「ケンタウルス、大熊、蠍、白鳥、南十字、琴、鷲、海豚、双子の星、プレシオスの鎖、マゼラン雲、天の川などがえがかれている」。これによって、宮沢賢治の「星」に対する関心が高いことも分かるのでしょう。また宮沢賢治が星に関心を持つようになるききっかけとして、草下英明はハレー彗星出現事件が「少年の賢治を刺激して屋根にまで上がらせた」と出張した。[1]来自优Y尔L论W文Q网wWw.YouERw.com 加QQ7520~18766
しかし、今『銀河鉄道の夜』の研究は、作品が表す幸福論・孤独意識・死生観などに焦点を当てるだけで、作品の中の星座を見落としてきたように見受けられる。海外では、石井竹夫が人間・植物関係学会雑誌で、『銀河鉄道の夜』に出てきた大体全部の植物に関して研究をした。その他にも、『銀河鉄道の夜』の中に出てきたキーワードの一つとしての「苹果」に関する研究も多くある。『銀河鉄道の夜』の中に出てきた星座に関する研究は、筆者が探したかぎりで、上村くにこの「『銀河鉄道の夜』における星のシンボリズム」だけである。国内では、『銀河鉄道の夜』に関する研究はそれほど多くないが、徐仙梅の「宮沢賢治童話における『星』の意味—『よだかの星』と『銀河鉄道の夜』を中心に—」という論文があった。この論文の中心は星座ではないが、宮沢賢治にとっての「星」の意味を研究するものので、筆者が研究する課題とは関連性が高く、いい参考になった。
3。 作品の中に出てきた星
3。1。サウザンクロス
サウザンクロスは、みなみじゅうじ座のことである。南方にある星座のため、日本では限られた場所でみられる。南十字はイエス・キリストの十字架からであり、キリスト教の象徴でもある。ダンテの『神曲』では、ダンテが煉獄の入り口を通り、北半球から南半球へ入るとき、「われ右にむかひて心を南極にとめ、第一の民のほかにはみしものもなき四の星をみぬ」という文があり[2]、ここの「第一の民」は最初の教徒のことである。歳差運動によって、イエスの時代では、欧州からみなみじゅうじ座は見えるが、ダンテの時代ではもう見えなくなっていた。