さそり座のα星はアンタレスと呼び、ギリシャ語では「火星に似たもの」という意味である。アンタレスの表面温度が3500度ぐらいと温度が低いので、赤色系に見える。その色のため、アンタレスは日本では赤星と呼び、中国では火や大火と呼ぶ。詩経「豳風七月」に「七月流火」の句の「火」もこの星である。そして、アンタレスはさそり座の心臓のところに位置する。この二つの原因で、宮沢賢治は「真っ赤なうつくしいさそりの火」を想像したのであろう。文献综述
宮沢賢治はキリスト教に興味があり、キリスト教の知識も学んだが、彼の死生観に影響が一番深いのは、法華経である。法華経の中にも、薬王菩薩が自ら香を飲み、身体に香油を塗り焼身したという話がある。『銀河鉄道の夜』のさそりの火も、このような無私的な思想を反映した重要な意象である。これによると、『銀河鉄道の夜』にも宮沢賢治の「自分を燃やし、魂を浄化し、世界を照らす光と引き換える」という思想があるということが分かるであろう。