「紅葉の錆色が日ごとに暗くなっていった遠い山は、初雪であざやかに生きかえった。薄く雪をつけた杉林は、その杉の一つ一つがくっきりと目立って、鋭く天を指しながら地の雪に立った。」
惚れ合った男と女の間では、愛憎、嫉妬などさまざまな感情が行き交う。川端さんはそんなたくさんの色模様を包み込めるのが白だと思っていたのではないでしょうか。「雪国」はノーベル賞事務局でも川端さんの代表作とされていた。川端さんはそれを知っていたからこそ、白が日本人の美意識であることを講演で伝えようとしたのではないでしょうか。
4。『雪国』での赤と白文献综述
『雪国」の語彙の数は、82600語であり、その中、色彩語の数が106語である。『雪国』は総字数82600字のうちに、106個の色彩語が抽出される。779字に一語の割合である。波多野完治は川端を含めた八人の日本の男性作家の色彩語を調べている。それによると、日本の小説における色彩語使用平均は「原稿用紙三枚に一語ぐらいのわり」だということである。その平均から考えると、『雪国』では比較的多くの色彩語が使われていると言える。この統計結果から見ても川端文学の全体から見ても、色彩は川端文学における極めて大切な要素だと言えると思われる。では、具体的に『雪国』という作品においてもっとも多く使われている赤と白に、どのような意味があるのか。本章では、以上の点について検討しようと思う。ここでは、まずはっきりさせたいのは研究対象とする色彩語、つまり色彩語抽出の基準ということである。その基準は白鳥幸代が「川端康成『雪国』の一考察-色彩語を中心にして-」における色彩抽出の基準を参考する。それは「おのおのはっきり色彩語とわかるものを抜き出し、複合語13(赤とんぼ,黄蝶)は採用しないということを、色彩語抽出の基準とした」。まず、そのような基準で『雪国』の中に出てくる色彩語を統計したことは以下の図表で表現している。