第二章 先行研究と本研究の立場

2。1 先行研究

従来の研究では、自発の形態的な定義について、三つの立場がある。ⅰeru形を自発と考える立場として、寺村(1982)がその代表で、いわゆるeruという形態素がついたものを標準の形をしている。ⅱ(ラ)レルを自発と考える立場としては、山田(1936)、時枝(1950)がある。動詞の語尾に、「れる」「られる」をつけたものを自発の意味としている。ⅲeru形と(ラ)レルの両方を自発と考える立場の松下(1930)は自然的被動を例にし、「案じられる、思われる、書ける、笑える」など、eruと(ラ)レルという形をしている文が自発の意味があると指摘している。

前述のように、寺村(1982)はⅰeru形を自発と考える立場をとっている。形態のみから見ると、受身と可能と自発は部分的に連続していると述べている。さらに、その意味的・統語的特徴から見ると、自発と受身と可能のつながりを以下のように検討している。

受動的可能表現は文脈、つまり前後の文の助けによって、あるいは具体的な話の場の状況についての知識によって、「X二/ガ」が省略された場合と区別しなければならない。

述語が受身形のときは語根で表される動作の主体の「意志的、主体的な認知、認識」を表している。それに対し、自発形のときは「無意識的な知覚」「自然に視覚、聴覚に映じた印象」を表している。

「何することができる」という意味のときを可能態、「自然にそうになる」という意味のときを自発態と判定する。客観的なテストとして、「~テイル」という形をとれるか否かということがある。「~テイル」という形がとれなければ可能態、とれれば自発態と判定する。ただ、「可能な状態」でも、目前にその状態が出来した、というときに、「(デキ)テイル」という形になることがある。また、自発と思われる表現でも、否定になったときは、可能と区別しがたいことがよくある。

堀川(1982)はⅱ(ラ)レルを自発と考える立場をとっている。意味的・統語的特徴によって自発を「感情生起型」「想起型」「判断型」三つに分類し、各型の自発文と受身文と可能文との関係を詳述している。感情生起型の自発は、対象の属性を表す場合と感情の主体が背景化される場合の二つがある。いずれの場合も無情の受身に近づく。想起型の自発は可能に近づくと考えられる。判断型は可能にも受身にも近づいたタイプとして位置づけることができる。文献综述

松下(1930)はⅲeru形と(ラ)レルの両方を自発と考える立場をとっている。自発を「自然的被動」として、「自然的被動は被動の形式を用いてして原動が自然動(非意志的の動作)であることとしている。同時に「転活用及び『られる』の『ら』を省略した方は心的作用の動詞ばかりでなく一般の動詞に広く用いられる」と述べている。

2。2 本研究の立場

本稿では思考動詞「思う」「考える」「信じる」「望む」「疑う」を取り上げ、それらの文を分析し、考察を行う。堀川(1982)のⅱ(ラ)レルを自発と考える立場をとり、「思われる」「考えられる」などの(ラ)レルの文を考察し、自発と受身と可能のつながりを明らかにしてみる。

第三章 思考動詞文における自発・可能・受身の用例と分析

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