筆者は2015年4月から日本で一年間留学していた。これまで数多くの日本人と接してきたが、日本人の対中イメージがそれほど悪いとはどうしても思えない。中国人と接触してはじめて、テレビやニュースでのイメージと違ったなどと言ってくれた人もたくさんいる。したがって、直接的交流をしなければ、もともと自分が持っている先入観や偏見では正しい対中イメージが作りにくいと考えられる。また、直接的交流は国民の正しいイメージ作りにの重要であることも痛切に感じた。大学生は中日関係の未来を担う役割で、中日関係を支える基礎であるために、日本人の大学生に直接的交流の重要性を理解してほしいと考える。では、実際に日本人大学生は中日交流に対してどのような意識を持っているのか、正しい対中イメージを作るのにどのような問題があるのかという点から述べていく。
2.先行研究と本研究の立場
2.1先行研究
2.1.1日本人大学生における中日交流の現状
現在日本人大学生の留学状況について、いくつかの研究調査が実施されている。
文部科学省は2011年「日本人の海外留学者数」の調査を行った。調査によると、2011 年度統計では、海外の大学などに留学した日本人は2004 年より7 年連続して減少し、5 万7,501 人となったことが報告されている。ピーク時である2004 年(8 万2,945 人)と比べ、約30%(2 万5,444 人)の減少となっている。大学などの教育機関では、単位取得のために外国語を学んでも海外に興関心を示さず、留学に対する意欲も見られない大学生が多くいることが指摘されている。また、京都大学が同じ年に行った調査「大学生の海外留学に対する意識と行動」によると、「留学したい、既に留学が決定している」学生は17.8%を占めている。以上のように、近年、留学する日本人大学生が減少している傾向が見られる。また、小島など(2015)は日本人大学生の留学現状に対し、「内向き志向」があり、「留学生との文化の違いや留学生とかかわることに対する不安が高い」と指摘している。
では、日本人大学生は本当に海外に関心を持っていないのか。穆、孟(2015)は関東にある国立大学の学生48人を対象に、国際交流プログラム参加の前後に訪問国の中国・中国人に対する意識に変化が見られるかを分析した。学生は中国語の授業、中国の文化体験、また、中国の学生の家庭訪問、企業見学、内観光などの活動に参加した。その学生たちに対して中国や中国人に対するイメージについてアンケート調査を行った。参加前の「やや好戦的で男性的という硬い一面」のイメージが中立的から、参加後、「中国人に対しやや親切で親しみやすい」というイメージに変化する傾向にあることが示された。すなわち、先入観を取り除き、十分な直接的体験をすることは、相手の国に対する興を持たせ、継続的な交流の場を確保するのに意がある大事な一歩だと考えられる。また、「距離感」があるといった負のイメージから、「自己の成長」や「新しいことへつながる」など正のイメージに変えることにも有効であろう。
以上の先行研究から、日本人大学生が中国に対する正しいイメージを持てていないのは、中日大学生の間の交流がまだ足りず、中国に対して偏見を持つ人が多いからだということが分かった。したがって、直接交流する中で、中国に対する関心を高め、自分なりの理解を形成することができよう。