2.1.2日本人の対中イメージ
日本政府が行った調査により、日中間の往来者総数と日中間の留学生を加えると、2012年10月1日の推計上、中国に在留している日本人は150399人に達しており、2012年度の訪日中国人数は1425100人と過去最高であった。数字だけ見れば、これは中日交流史上空前の規模の交流とはいえるが、このような交流が進めても、必ずしも相互理解が深まるわけではない。2012年日本政府による尖閣列島国有化は中日関係を築くのに大きな障害になった。内閣府が2013年に行った世論調査では、中国に「親しみを感じる」とする者が18.1%を占め、「親しみを感じない」とする者が80.7%を占めており、「親しみを感じない」人は「親しみを感じる」より膨大にいる。また、現在の中日関係については、「良好だと思う」とする者が6.7%、「良好だと思わない」とする者が91.0%を占めており、9割以上が中日関係を良好ではないと感じていることが分かった。
藤田(2005)は日本と中国の間ではここ10年来、「政治、外交関係は冷たい関係が続いており、両国民の間の信頼関係も低下している」と評価している。さらに、2012年「尖閣列島・釣魚台問題」が出てきた後、中日関係はいちだんと悪化した。2015年、中国外文出版発行事業局(中国外文局)が国際市場調査機関と共同で9カ国4500人を対象に「世界各国が中国に対して持つイメージにかんする調査」を実施した。調査では、各国国民による中国への好感度が10点満点で示された。そして調査の結果、日本は3.4点だったとし、日本人による評価が顕著に低かったことを伝えた。このように、近年日本人の中国に対する好感度が下がったことがはっきり見られる。しかし、調査によると、中国人と直接的交流した経験のある日本人は交流したことがない人より中国に対する好感度は高いそうである。したがって、直接的交流は国民の正しい対中イメージを作るのに積極的な役割を果たすと示されている。
また、以上の調査から考えると、中日交流は形ではなく、質も求めるべきだと思われる。とくに、自分が持っている先入観や偏見を捨て、身をもっての交流を進めれば、両国の国民の間に相互理解と友好関係が築けるのではないか。大学生間の文化交流は同じ世代の同じ人間同士と交流できる舞台で、若い世代にとって自分から動きだしての相手国を知るための始まりと言えよう。
2.2 本研究の立場
先行研究を探していると、日本人の留学現状や国際交流に関する意識の調査がたくさん調べられるが、中日交流に限った先行研究は少ないのは事実である。ほかに、中日交流のプログラムを通じて学生の意識の変容を調査する研究はいくつかあるとはいえ、大学生を対象に、全般に中日交流への意欲に関する調査は見当たらなかった。大学生は今の中国についてどれくらい知っているか、中国に関心を持っているか、中日関係に対してどう考えているか、中日交流に対し積極的かどうかなどの情報は先行研究の中ではほどんど触れていない。
以上の問題を抱きつつ、本研究は先行研究を研究背景とし、大学生を対象に全体的な中日交流に対する意欲を調査して、日本人大学生の中日交流に対する意識を把握し、その中の問題点を分析することを目的とする。