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    日本人が狐を稲と関連させた起源は、文化人類学的推察にもとづく農耕民族の必然だったとする必然起因説と、歴史学的手法に基づいて推察して、神の名に「狐」を宛てたことによるとする、誤解起因説の2通りがあって特定はされておらず、その後大陸より渡来した秦氏の勢力によって、狐は稲荷神の眷属に収まったという流れになっている。
    稲作には、穀物を食するネズミや、田の土手に穴を開けて水を抜くハタネズミが与える被害がつきまとう。稲作が始まってから江戸時代までの間に、日本人は狐がネズミの天敵であることに注目し、狐の尿のついた石にネズミに対する忌避効果がある事に気づき、田の付近に祠を設置して、油揚げ等で餌付けすることで、忌避効果を持続させる摂理があることを経験から学んで、信仰と共に狐を大切にする文化を獲得した。
    日本古来の世界観は山はそれ自体が山神であって、山神から派生する古木も石も獣もまた神であるというが基としてあると言われている。
    民間伝承の狐神信仰の発生がいつ始まったかの特定は難しいとした上で、発生の順番から考えて、土地が開墾される以前に狐が生息しており、畏敬された狐神と稲荷の結合は、田の神信仰と稲荷の結合に先立つであろうと言われている。
    一方、稲荷神社の神は、宇迦之御霊神、別名、御食神であって、三狐神と書き誤って、日本中に誤解が定着したという説も、根強く有力な説である。
    『日本書紀』によると、斉明5年、神の宮を改修し始めた直後、狐が現われて柱を曳く蔓の綱を根元から食い切り、狗が現われて死人の手を言屋社に残したという記事が残されている。
    とにかく正史に狐の記事が記載されたのは、『日本書紀』斉明記3年石見に現れた白狐の記事であり、伝記に狐が記載されたのは『日本霊異記』欽明天皇の時代とされている。狐が騙す、化ける妖怪の一種であるという概念は、仏教と共に伝来したもので、中国の九尾狐の伝説に影響されたものである。
    2.2 アニミズムの時代
    弥生時代、日本に本格的な稲作がもたらされるにつれネズミが繁殖し、同時にそれを捕食してくれる狐やオオカミが豊作をもたらす益獣となった。柳田國男は、稲の生育周期と狐の出没周期の合致から、狐を神聖視したという民間信仰が独自に芽生えたと言う説を述べている。必然起因説はその発展系と見られる。
    2.3 神道への吸収
    御饌津神が誤って三狐神と書かれたという説が定説である。しかし秦氏が土着民への懐柔策として使用させたとの説もある。大和時代に入り朝廷が勢力を拡大する中、抵抗する土着の神を持つ民を排除し、狐と呼んで蔑視していた。
    土着の農民は、独自の「山の神‐田の神」を信仰しており、狐をその先触れとする文化があったものの、『日本書紀』の欽明記の時代に伊勢と交易を行い、後に国庫の管理者となる程の秦氏の経済的な勢力に押され、元は「田の神‐山の神」の祠であった場所が秦氏の神社になった事に、農民たちは旧来の神を祭りながらも抗えなかったであろうと言われている。秦氏の稲荷の眷属の狐は「命婦」と呼ばれ、命婦の位を持っているが、最初からそのような位を持っていた訳ではないということは、伏見稲荷の縁起によって示されている。
    こうして土着の神は豊穣をもたらす荒神的な性格から「宇迦之御魂大神」の「稲荷」として認識され、シンボルである狐自体は眷属に納まったと考えられる。
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