4. 4 御霊の不滅 14
5.おわりに 15
1. はじめに
1.1問題提起
二十世紀九十年代になると、日本のホラー映画は雨後の竹の子のように現れた。日本のホラー映画は独特で東方的な恐怖を持ち、映画産業の重要な地位を占め、世界規模の観衆を魅了している。その中でも、怨霊という主題は頻繁に用いられている。例えば、最も有名なホラー映画の「呪怨」や「東海道四谷怪談」、「リング」などは怨霊と切り離せない関係にある。言わば、怨霊という主題はホラー映画の一つのモチーフである。
御霊信仰は日本の伝統的な信仰である。日本人は、疫病や自然災害の発生を、非業の死を遂げ、怨みを持った怨霊の仕業だと認識している。怨霊の復讐は非常に残虐非道で、平穏な生活を望む日本人は、この祟りから免れるために、怨霊を御霊と称え、これを神として祟めている。唯物論から見れば、怨霊は現実に存在しないため、それに対する考え方、行動はある意で怨霊への畏敬の心理であることが明らかである。
日本では、怨霊について書かれた「源氏物語」や「百鬼夜行』、「雨月物語」、「四谷怪談」などの数多くの怪談文学がある。日本の伝統文化の薫陶を受ける日本のホラー映画の監督は、怨霊という絶好の題材を見逃さず、怨霊そのものを主役とし、無限の復讐をする映画を作り出した。それにより、日本のホラー映画は世界的知名度を獲得する。怨霊のホラー映画は、日本の独特の文化の代表になっただけでなく、例えば「リング」は、配給収入20億円を記録するヒットとなり、後に続くジャパニーズホラーブームの火付け役ともなった。
「東海道四谷怪談」「リング」「呪怨」「トイレの花子さん」、これらはどれも日本の幽霊文化を反映している。しかし、日本のホラー映画の研究で、御霊信仰とを結び付けて分析した論文は決して多いとは言えない。
したがって、本論文は「呪怨」という映画を取り上げ、日本人の御霊観の分析を試みる。
1.2 先行研究
1.2.1日本のホラー映画に関する研究
日本のホラー映画は人気が上昇するにつれ、それに関する研究も重視されるようになった。
刘(2011)では、主に日本のホラー映画の発展過程、叙事パターンという二つの面から分析した。彼女はその発展の理由を「90年代になると、バブル経済崩壊の影響で、日本の経済や政局が不安定になった。日本全国が巨大なパニックに陥り、国民はかなりのショックを受けた。そこで、信用危機が起こり、社会への反発も芽生えた。こういう背景において、ホラー映画は雨後の竹の子のようにどんどん誕生してきた」のだと述べ、また「愛や愛する相手を失った後の復讐は叙事の基本的な動機である」という叙事パターンを指摘した。
日本ホラー映画の人気が上昇した理由を更に探ってみると、李(2010)では、「日本のホラー映画が人々に好まれる理由は、日本の社会現象さらに本質を反映しているからである」と指摘している。また、王(2005)は「日本のホラー映画の側面は、日本民族の価値観と道徳を映している」と述べている。つまり、日本式ホラー映画ブームという現象の背後に、社会の本質やその民族の精神的要素なども潜んでいることがわかる。