山梨県の訪日外国人観光客の受け入れについての分析は、似た環境をもつその他の地域にも応用できる。旅行業が発展すると、運輸業、宿泊業、飲食業など幅広い産業も発展でき、地域経済効果は非常に大きくなり、大都市圏と対抗できる可能性も生まれるのではなかろうか。

1. 大都市圏における訪日外国人観光客受け入れの現状

 日本における三大都市圏とは、首都圏、中京圏と近畿圏である。首都圏は、首都及びその周辺の地域を一体とした広域を指す。つまり東京とその周辺である。中京圏とは、愛知県の県庁所在地である名古屋市を中心とする都市圏である。また、近畿圏は、一般的に大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、滋賀県と和歌山県の2府4県を指す。

 日本の人口、企業活動、大学などの教育機関は、この三大都市圏に集中しているだけではなく、外国人観光客もこの三大都市圏に集中している。2016年の「トリップアドバイザーのベストデスティネーショントップ10―日本」によると、第1位は東京都、第2位は京都府、第3位は大阪府である。また、観光庁によると、平成26年の訪日外国人消費動向調査において、「観光・レジャー」目的客(以降、観光客と記載)の都道府県別訪問率は、2大都市圏(首都圏と近畿圏)のみ訪問した観光客が44%であった。(観光庁観光戦略課調査室,2015)

近年、訪日外国人観光客の増加のために、観光消費額も年々増えて来ている。2015年の「ユーキャン新語・流行語大賞」を受賞した「爆買い」や「インバウンド消費」という言葉を聞くことが多くなった。2014年10月に、日本銀行大阪支店が発表した「訪日外国人客による消費が近畿の個人消費にもたらす効果について」というレポートによると、近畿圏においては、訪日外国人数、外国人宿泊者数が関東・全国平均より高いペースで増加しており、インバウンド需要の効果を強く受けている。また、銀座免税店、成田空港、羽田空港、関西空港や中部空港などでも爆買いが起きていた。

しかし、大都市圏へ旅行に行く外国人観光客は多く、さまざまな問題が起きていた。まず、インバウンド数の増加に伴う宿泊するホテル、旅館などが全く足りないことである。宿泊施設は、大都市圏を滞在拠点とするのが現状である。特にゴールデンウィークなどの観光のピーク時には、多くがそのような傾向にある。また、公共交通機関も足りなくなっている。多人数のツアーならば、一同に出かけることは難しい。交通渋滞も常に起こっている。そして外国人のマナーと日本人のマナーが異なるために、外国人はそれを知らずに日本人のマナーを守らず、地元の日本人の不満を買う可能性もある。また、環境問題も起こりやすい。大都市は常に地方より汚いというイメージがある。さらに、爆買いが原因で、在庫の供給不足の恐れもあるかもしれない。これは地元の人に迷惑をかけることになる。以上の問題により、観光客を大都市圏から地域へ分散させることを求めている。

1.1大都市圏における訪日外国人観光客の動向

近年、空港路線の拡大、燃油サーチャージの値下がりなどの原因により、空港運賃が安価となり、訪日旅行の需要がさらに拡大された。日本政府観光局の2015年に訪日外客数(総数)をみると、中国から来た観光客は約499万人で、最も多かった。その次は韓国、第三位は台湾となった。

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