その後、この人気小説はベトナムの監督である陳英雄によって映画化され、2010年12月11日に日本で公開された。しかし、その映画は読者の期待にそえず、興行収入もよくなかった。なぜ映画化された『ノルウェイの森』は小説のような人気を集めなかったのだろうか。映画の言葉で文学作品を表現することにより、この作品で作者が述べたかったことがうまく伝わらなかったのだろうか、また観客にこの作品を一層深く理解させられなかったためだろうか。それともこの作品の映画化で監督自身の考えを加え、観衆たちに新しいメッセージを伝えようとしたためなのだろうか。
本論文は、小説版と映画版の『ノルウェイの森』を比べ、その異同点を分析し、上記の答えを探す。それとともに、これから多くの作品が映画化されるときの参考になると考えている。
1.1 小説とは
小説は文学の一形式で、散文体の文学である。『新世紀日漢双解大辞典』には小説は次のように定義されている。「18世紀以後、近代市民社会の生活、道徳、思想を背景に完成され、作者が自由な方法とスタイルで、不特定多数の読者を対象に人間や社会を描くものは小説と言う。」『現代漢語大辞典』では「小説は事柄を叙述する文学作品の表現形式であり、完備している物語の筋と具体的な環境描写を通じ、様々な人間像を描き出し、社会生活を広く反映するものである」と定義している。つまり、小説は物語の筋、社会環境と人物という三つの要素がある。
1.2 映画また映画化とは
『新世紀日漢双解大辞典』では映画を「一秒16または24こまの速度で連続的に撮影されたフィルムを、映写機によって投影し、一連の物語や映像などを写し出すもの」と説明している。映画は直接な画面や感覚を人々にさらけ出して見せる。映画化とは、『スーパー大辞林』によると、「小説や実際の事件などを脚色して映画にすること」である。
1.3 先行研究
なぜ映画化された『ノルウェイの森』は小説のような人気を集めなかったのだろうか。その原因を明らかにするために、筆者は先行研究を調べてみた。
映画評論家の図宾根木匠は『ノルウェイの森』が書かれた時の歴史的背景と社会の現状を結び付け、『挪威的森林 赤军式小清新』で「世界で流行する人気小説としての『ノルウェイの森』は、ほぼ一世代の人々の記憶に残るものである。『ノルウェイの森』の行間に、数え切れない読者たちの青春が葬られていると言っても過言ではない。このような話題の名作が映画化されたなら、いくら苦労をしたとしても良い評判を得難いとわかるだろう」と指摘した。しかし、図宾根木匠はその難しさを詳しく説明しなかった。
大学の助手于麗君は『从电影挪威的森林解读村上春树作品中的迷茫和孤独』で、小説『ノルウェイの森』の主な人物の性格を分析した。また、陳英雄監督の同名映画と比較し、ワタナベの人物描写は簡単であるが、具体的で、心に隠したこともきれいに描き上げたことと、直子、ミドリ、玲子、キヅキなどの人物は劇の筋の一部分が省略されたため、よく表現されなかったことを指摘した。于助手が注目したのは小説版と映画版の『ノルウェイの森』における異同点ではなく、村上の作品の迷いと孤独をどう表現したかという点である。
記者李卿は『陈英雄迷失在森林深处』で「人物篇」「主題篇」「風格篇」三つの面より見解を述べ、陳監督の映画に対し、「『ノルウェイの森』のストーリーは、心で理解できるが、言葉で表すことはできない。それで、映画でそれを完璧に描くのは不可能だろう。そのため、陳英雄の『ノルウェイの森』は人々に批判されたのである。私もその森のなかで迷ってしまった」と批判した。 小说版和电影版《挪威的森林》之间的异同点(2):http://www.youerw.com/yingyu/lunwen_48489.html