日本評論界が行った東野圭吾への研究は、我が国にとっても参考意義があることだと思われる。2006年に中国では東野作品はまだ販売されていなかったが、インターネット上の百度百科において、すでに東野圭吾のページが作られていた。その内容は2006年以前の作品の受賞状況を主としていたが、2007年に『たぶん最後の御挨拶』が出版され、2014年には、このページの内容は400字から8000字にもわたるものとなっていた。それほどまでに、我が国においても東野作品は注目されており、国内の作家や読者に紹介され、大きな影響を与えることとなった。
しかしながら、推理小説は国内評論家にはあまり重視されておらず、2006年になってから、続々と国内でこの作家の作品を翻訳し出版し、2009年になって、ようやく国内の読者の視線を集め始めた。そのため、東野圭吾に関する国内の研究著作、及び論文はほんのわずかである。2014年10月まで、東野圭吾及びその作品への研究著作はまだ数が少なく、全体的に研究を行った学位論文もわずか1篇しかない。他には四つの論文がある。
2010年、国内の初めての東野圭吾を研究対象にした論文が発表された。それは牛麗の「東野圭吾探偵小説における人間性ー白夜行を中心にー」である。この論文は、東野圭吾を日本推理小説の発展脈絡に置き、簡単に紹介したものである。また、『白夜行』のあらすじと主要な人物から始められ、作品の「人間性のテーマ」を分析した。
2011年には国内で、計四篇の論文が発表され、その中の1篇が学位論文である。王婧殊の「白夜行から東野圭吾の創作を論じる」はバラード学の理論を使って『白夜行』の構造と叙述を分析し、読者の角度から小説の対話性と想像空間にも言及した。楊洪俊の「東野圭吾の探偵小説の魅力を解読する――<白夜行>を例に」は創作背景、作品の分類、小説の筋や人物描写の面からまとめて、『白夜行』が作者のすべての作品における地位を強調した。陸昕の「美人は災いの元ー東野圭吾に書かれた女」では『白夜行』と『幻夜』のヒロインを対象にし、東野に書かれた「性で人を魅惑する」悪女のイメージを分析し述べた。
さらに2011年5月には、河北大学の張氷が「東野圭吾作品のドラマ化映画化研究」を発表した。東野小説のドラマ化、映画化作品を主な研究対象にして、映画改編の理論に基づき、改編状況の概括、「推理の世界の独特な魅力」、ドラマ化映画化された具体的な作品という三つの方面から研究を行った。また、東野の「推理の世界と独特の魅力」を論じ、洗練された文字、謎・謎解きへのこだわり、感情へのこだわりという三つの面から作品の特徴をまとめた。
1.2本稿の目的と方法
東野圭吾の作品に関する国内外の研究はほとんど前期の作品及び『白夜行』をめぐっているものがほとんどであるので、不足があると言わざるをえない。それに他の作品へ研究も少ないという事情を踏まえ、本稿では、『容疑者Xの献身』における男性イメージを研究対象にし、それによって作品の社会性をまとめて、東野圭吾及びその作品への深い認識をもらえるように研究を進めようと考えている。
2. 東野圭吾及びその作品
2.1東野圭吾
東野圭吾は、現代日本を代表する推理小説家である。現在まで、すでに刊行された七十四冊の作品のうち、二十冊を数える作品が映画化あるいはテレビドラマ化された。