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    2.1マスコットとしての「招き猫」
    日本人は無数の縁起物、マスコット好きな民族だと言える。福助、ダルマ、お地蔵様、松竹梅、大福帳、タヌキなどのさまざまなマスコットが一般の家庭や商店はもちろん、公共施設や企業の社長室にまで飾られている。見渡すと、日本人の身近にすっかり溶け込んでいる小さいなラッキーゴッドは、やっぱり招き猫である。
    招き猫は今から約五十年前の江戸時代末期に、江戸の町で成立したものと考えられる。招き猫 の起源については複数の説があり、井伊直孝を招いた「招福猫児(まねぎねこ)」で有名な、世田谷豪徳寺もその一つだが、結局のところ決め手はない。
    招き猫は前足で人を招く形をした猫の置物で、元は養蚕農家(蚕を飼育して絹を取る農家)の縁起物であったが、養蚕業は衰退してから、広く商売繁盛の縁起物とされている。招き猫 の挙げた手によって、意が違う。右手を挙げている猫は『銭を招くもの』、左手を挙げている猫は『客を招くもの』、といわれているようである。 また、その挙げた手をよく観察すると、耳の辺りまでしか挙げていない猫や耳を超えて高く挙げている猫がいる。この手の挙げる高さにも意があり、高ければ高いほど遠くの福を招くといわれる。

    2.2文学作品から見る猫の像

    猫は日本の文学作品に重要な素材になり、たくさんの作家に愛用されている。猫が人間の身近な動物であるので、文学作品にいつも人として描かれている。しかし、単なる擬人化だけでなく、猫に人間のような価値観や世界観や、意志などを与えて、知恵がある生き物として創造された。最も典型的な作品は夏目漱石の『吾輩は猫である』という小説がある。英語教師、苦沙弥先生の家に飼われている猫である「吾輩」の視点から、飼い主である苦沙弥先生の一家や、そこに集う彼の友人や門下の書生たちの人間模様を風刺的に描いた、漱石のデビュー作である。全作品には、ナンセンスの笑いの面白さもあり、皮肉っぽいブラック•ユーモアもあり、一見には笑い話であるが、深く考えると、その中に自分自身を省みて反省する要素があり、深い意の文学作品である。
    日本文学界には、猫を主人公として書かれた作品があり、配役としての作品もある。猫を配役とした書かれた作品があり、擬人化されている。その内容は人間にあふれ愛着があるが、悪役もある。「猫股」 (猫又)とは、日本の民間伝承や古典の怪談、随筆などにある猫の妖怪で、典型的悪役である。大別して山中にいるものと、人家で飼われているネコが年老いて化けるといわれるものの2種類がある。 江戸時代以降には、人家で飼われている猫が年老いて猫又に化けるという考えが一般化し、人の言葉を話したり二本足で歩いたり、果ては人を食い殺したりするとして恐れられていた。これに対して、「恩返し」のような猫もある。『日本昔話事典』 に載せた「猫檀家」という話は、ある寺が貧乏の挙句、食事にも事欠くほどになり、和尚はずっと飼っていたネコに暇を出した。するとネコは、近いうちに長者の家で葬儀があるといって、和尚に策を授けた。やがて長者の家の葬儀の日、亡骸を納めた棺桶が突然、空に舞い上がった。参列者たちが驚き、その場にいた僧侶たちが必死に祈祷するものの、棺桶は動かない。だが最後に貧乏寺の和尚が経を唱えると、棺桶が降りて来て、無事に葬儀を済ますことができた。この一件で和尚の名声が広まり、多くの家がこの寺の檀家となり、寺は後々まで栄えたという。
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