シュールレアリスムの影響を受けた安倍公房は唯物論に接触し、日本の共産党に入党することにした。1951から1962までに、安倍公房は積極的に前衛文芸運動に参加し、且つ、『壁――Sカルマ氏の犯罪』という作品は第25回芥川賞を受賞し、シリーズの「変形」小説で戦後派の代表作家になった。1962年の長編小説『砂の女』が世に問ってから、他の作品も数多く翻訳され、海外に紹介されるようになり、三島由紀夫、大江健三郎と並ぶ世界中有名な日本現代作家になった。二十世紀六十年代の時、安倍公房は都市小説の三部作――『他人の顔』、『箱の男』、『燃え尽きた地図』を創作し、作品の影響力の拡大を持続する。

安倍公房は一生にかけ、文学作品を大量に作り出した。主に小説や劇曲の創作に集中した。人間の存在という課題への関心と現実主義を超えることへの探索は作品の特徴になった。「存在」は安倍小説を解読するキーワードだ。多くは資本主義社会の危機に取り囲まれた人々が抱く孤独感、絶望感および現実社会の矛盾を表している。それこそ安倍公房文学の主題だと思われる。

1。2先行研究 

安倍公房の国際的名誉とふさわしくないのは、作品を専門的に研究する作がまだ多くないことだ。2000年前、単行本は極めて少なかった。21世紀に入ってから、安倍公房に関する研究は盛んになってきた。波潟剛の『越境のアヴァンギャルド』（東京：ＮＴＴ出帆2005年版）は安倍公房をアヴァンギャルドの範疇にまとめて、安倍公房と戦後アヴァンギャルドとの関連性や、代表作の『砂の女』と経済高度発展期のアヴァンギャルドとの関わりを研究した。苅部直の『安倍公房の都市』は政治学の立場から、都市、偽満州、廃墟、失踪などのキーワードをめぐって、安倍公房中期の都市文学作品を研究した。

中国では、安倍公房の作品に関する翻訳と研究は二十世紀八十年代からである。国内の学者達は安倍公房の実存主義の特徴に研究の重点を置いている。cnkiを検索すると、安倍公房に関わる研究は30件ほどあることが分かる。『砂の女』についての先行研究は６件しかない。主に以下の方面にまとめられる：まずは実存主義の視角から。この作品は現実感に富んだ奇妙な寓言であり、現代人の孤独な窮地と現代人の生存についての戸惑いを反映しただけではなく、人間の存在、空間、価値等の社会的意義と現実的意義を鋭く分析した。『砂の女』も、絶望、矛盾といった現代人の混乱した精神状態を表現している。そして、無常観の視角から。作者は豊かな科学知識、無限な想像力と現代理念、優れた表現技巧をもって、奇異なメビウス輪式の舞台と物理的時空を建築し、読み手のファンタスチックな想像と奇妙な考えを引き起こすことができる。日本文学の伝統に根を下ろしたと同時に、モダニズム、無常観による新たな体験を持っている。最後に、表現技巧の角度から。作品の主題と人物イメージの浮き彫りに役立つこの小説の表現技法に鮮明な特徴が窺われる。

1。3研究目的と意義

『砂の女』は不条理な世界を描き、現実の「必要性」が人間社会の生活意識を抑えており、人間は団体に馴染めないとその存在が許されないという客観的現実性を示してくれた。作者は人生に対する思考、疑問、憂慮をこの作品に凝縮したことは間違いないものだ。この作品を研究することによって、作者が伝えたい思想と考えをはっきりさせることができる。これによって、安部公房研究を一層促進できると思われる。