2. 先行研究
本章は中国と日本における柳を対象とした先行研究を分析する。
柳が最も早く日本の文献に記録されたのは『日本書紀』という文献である。『日本書紀』には、顕宗天皇の時の歌に、河副柳という言葉が出てくるが、この五世紀後期にあった柳かもしれない。『万葉集』では、天平二年正月、九州の太宰府での宴会でうたわれた歌の中に、「梅の花咲きたる苑の青柳は鬘にすべくなりにけらずや」が、ヤナギを読み込んでいるほか、幾首かの中に柳が登場する。しかしその後、中国の柳と日本の柳などを研究する人は少なくない。
日中学術界に柳に関する研究はまだ十分ではない。私が調べた限りでは、現在まで柳について出版された日本語の本はただ二冊である。一冊は三上良太が記した『楊柳記聞』で、もう一冊は柳下貞一に書かれた『柳の文化誌』である。『楊柳記聞』は学術研究著作でなく、ただ様々な資料を集めたにすぎないという資料集である。最初に柳を研究したのは『柳の文化誌』という著作である。柳下貞一は日本の各時代の柳をめぐって全面的に柳の文化を紹介した。この本を通じて柳文化が日本人の生活に伝えられた後、どんなに深く日本文学に影響を与えるのか、この点を理解することができる。しかも、内容の広さや豊富な資料に驚かれてやまない。柳下貞一は上代から戦後まで柳の文化を紹介した。しかし、この本には欠点もある。一つ目は多くの資料を並べ立てたが、まだ突っ込んだ分析が足りないということである。二つ目は文学作品に及んだが、その中に柳のイメージに関する研究に力を入れなかったという点である。いずれにしても、『柳の文化誌』は第1部の柳に関する著作として、その価値は大きいに違いない。その一方、中国語の柳に関する著作は張哲俊の『楊柳的形象:物質的交流与中日古代文学』や石志鳥の『中国楊柳审美文化研究』がある。まず、タイトルの通り、張哲俊は物質の立場から、「楊柳と生命崇拝」「庭柳と門柳」「楊柳と性別」の三方面を主題として、どのように中日古代の文学が互いに交流するのか、文学と物質にどんな関係があるのかなどの点に関して、いろいろな資料を研究し、深く分析している。そして、石志鳥は柳の題材とイメージの発展状況を考察し、情感や人格象徴から柳のイメージを分析し、柳の民俗・宗教・芸術・庭園の中の具体的な表現を研究した。『楊柳的形象:物質的交流与中日古代文学』でも『中国杨柳审美文化研究』でも中日の柳の男性化、女性化、娼妓化というイメージが紹介された。
多くの人は『万葉集』を対象に柳の文化を研究している。菊川恵三が「万葉の柳歌と漢詩の受容」で指摘したのは、万葉柳歌と「折楊柳」は大きな違いがあるということである。具体的に言えば、漢詩では柳は恨みや別れというイメージだが、万葉柳歌ではこの意がまったく見られない。高橋進は柳の担うイメージを分析し、主に柳眉や柳の女性化を研究した。宋詞をもとにして谢穑も柳の女性化について意見を発表した。その一方、李惠は唐代の柳のイメージの変化過程やその原因を述べた。蒋育君の「古典诗词中“柳”的意象分析」でも、倪同刚の「古代诗词中“楊柳”的十种意象」でも、蔺靖靖の「浅析“柳”的意象在古今诗词中的运用」でも、中国の詩と詞の中に広く使われた柳は多種のイメージがあることが分かる。しかし、これらの論文は分析が不十分だという欠点があると考えられる。
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