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1.2研究の意義と方法 5
1.3先行研究 5
2.異界のイメージ 6
2.1空に浮かぶ二つの月 6
2.2リトル・ピープルと 7
3.異界の中での主人公らの迷い 8
3.1青豆の善悪観 8
3.2天吾の性愛観 8
4.異界を通じての救い 10
4.1青豆の精神的な囲い込みと覚醒 10
4.2天吾の救い 11
4.2.1天吾と父親の和解 11
4．2.2異界——「猫の町」について 12
５．おわりに 13
中外文参考文献目录 14
謝辞 16
１．はじめに
1.1『１Ｑ８４』について
『1Q84』のBOOK1とBOOK2は、奇数章が「青豆章」、偶数章が「天吾章」という並行線路でストーリーが進む。第一章の中では、高速道路が渋滞したため、タクシーの運転手のアドバイスを聞き、ヒロインの青豆は高速道路の非常階段を駆け下りる。1984年に高速道路の非常階段を降りていった先に「1Q84」の世界があった。
好むが好むまいが、私は今この『1Q84年』に身を置いている。私の知っていた1984年はもうどこにも存在しない。今は、1Q84年だ。空気が変わり、風景が変わった。私はその疑問符つきの世界のあり方にできるだけ迅速に適応しなくてはならない。新しい森に放たれた動物と同じだ。自分の身を護り、生き延びていくためには、その場所のルールを一刻も早く理解し、それに合わせなくてはならない。（一巻、202頁）
こういう異界を描き、知的に解説しても人は納得できないが、村上は、それを解説で終わらせず、実際にそこに下りて行ったらどういう事が展開するのかを丁寧に描いている。上沼昌雄は「小説家としての極めて鋭い感性で、降りて行った世界が、またどこかで時間の流れを超え、過去に結びついていく（「1Q84」だと連合赤軍の事件を思わされた）。」 と言った。『1Q84』が出版された後、村上は取材を受けたことがあり、この作品がイギリスの作家オーウェルに敬意を表しているということを明らかにした。「オーウェルの未来小説『1Q84』に基づいて、そのほど前のことではないことを思い出す」と、村上春樹は述べている。確かに、日本語の「Ｑ」の発音が「９」の発音と同じで、『1Q84』は実際的には『1Q84』の倍音である。
この作品は、並行線路でストーリーで展開し、ヒロインの青豆とヒーローの天吾は会ったことがないが、青豆の世界と天吾の世界とは緊密に繋がっている。なぜならば、それは空に二つの月が浮かぶ1Q84の世界、つまり青豆存在している世界は、天吾に書き換えられた小説「空気さなぎ」の世界であるためである。言い換えれば、青豆存在している世界は異界というものである。
1.2研究の意義と方法
「異界」という非現実的な世界が、村上春樹の小説には必ずと言ってよいほど出てくる。 すなわち、「異界」はすでに村上文学の不可欠の要素となり、その構造は『1Q84』の中でも描かれている。現実的な世界と非現実的な世界、その二つの世界は精巧に結びつけられて村上の作品の中で現れている。また、主人公らはこの二つの世界の中で自由に行き交うことができる。非現実的な世界で存在しているが、現実的な「私」の心が見られると言っても過言ではない。