『人間失格』の初出は1948年に雑誌『展望』6月号に「第一回」として、「はしがき」「第一の手記」「第二の手記」が、続く7月号に「第二回」として、「第三の手記一」、そして8月号に「第三の手記二」「あとがき」がそれぞれ掲載された。内容は小説家の「私」が船橋市を訪れた時、バアのマダムと話し合い、そしてマダムから手記のノートと写真を受け取り、寝ずに手記を読んだ話である。「はしがき」と「あとがき」は「私」の視点から語り、「私」が手記を入手した経緯、及び感想が述べられている。「恥の多い生涯を送って来ました」という言葉で書き出した『人間失格』は大庭葉蔵の手記という形で、その「恥の多い生涯」がどのようであったかの始末は全文を通じて描いている。
最初の「はしがき」では、ある男の三枚の写真が出てくる。それらの写真はそれぞれ男の幼年時代、学生時代、壮年時代の姿が写っており、「私」は写真を見ながら、その男の顔つきや表情について説明してゆく。