1。1 先行研究

井上靖は中日文化交流協会の顧問とあって、中日における井上に関する研究は極めて多い。筆者の調べた限りでは、井上靖と『天平の甍』に関する先行研究は以下のようにまとめた。

1。1。1 井上靖について

刘艶紅 は、井上の自伝作「しろばんば」を取り上げ、幼少年時代の環境の影響は孤独感の形成の要因だということを肯定した。 趙秀娟 は、喪失感と虚無感を生み出した原因は初期に挫折の体験に関することと分析した。その後、人生の転換につれて、井上の孤独な性格は積極的な人生観に変えていくことも指摘した。 塚本嘉壽 は「井上性格の顕著な特徴と考えられる家族、伝統長上の規範のとり入れとそれらの庇護のおける自我の形成、取り返しのつかなさを中核とする抑うつ感という基底感情」について述べた。沈琳 は『北国』を中心として、北国への郷情、母性に敬慕の念、生命の悲しみを論じていた。とにかく、この散文詩集は、井上靖の孤独と感傷的な気質を含んでいることを紹介した。長沼夏子 は、『闘牛』について、津上の虚無と孤独な人生を深く議論した。また、「井上靖イコウル津上であるという事が強められる」と書いている。

1。1。2 天平の甍について

曹汾 は小説の筋を通じて、中日両国の昔の文化関係と伝統友情を回顧した。趙秀娟 は『天平の甍』に描かれた鑑真像をめぐって、人間の運命と夢の関係を分析した。張体勇 は、主な人物像について、史学と文学という二つ面から作者の創作意図を論述した。曾姝 は、人間の考えと予測できない自然の間の闘争を論じて,その中での命の美を総括した。袁盛財 はテキスト分析法を基づいて、作品中の中国のイメージを考察した。そして、作者の創作の現実と歴史の文脈を結びつけ、このイメージの形成の原因を論じた。陳娴 は小説のフィクションを探して、歴史に対する作者の見方を検討した。

1。2 研究の目的と方法文献综述

先行研究から見ると、中国と日本において、これまでに井上靖とその作品に対してかなりの研究が行われたが、井上自身とその文学の「孤独」についての研究はまだ少ない。そして、『闘牛』と『しろばんば』などの自伝風小説を取材にして書かれた作品をはじめ、孤独感についての研究は次々に発表したが、『天平の甍』における人物像ををめぐって、その虚無感と孤独感の研究はわずかである。筆者は創作の全盛期に発表した『天平の甍』にも、作者の独特の孤独感があふれていると思う。したがって、本稿は、歴史小説『天平の甍』を取り上げ、本文の内容を詳細に理解して、主にテクスト分析法を通じて、井上靖の孤独感を深く探ってみたい。そして、原作の中で主な筋や孤独者を研究対象として、さらに井上靖の人生体験と結び付けて、井上靖の孤独感を分析する。

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