1.1ゆるキャラとは何か
「ゆるキャラとは、「ゆるいマスコットキャラクター」を略したもので、イベント、各種キャンペーン、地域おこし、名産品の紹介などのような地域全般の情報PR、企業・団体のコーポレートアイデンティティなどで使用されるマスコットキャラクターのことである。狭義では、対象が国や地方公共団体、その他の公共機関等のマスコットキャラクターで着ぐるみ化されているものに限られるが、広義では大企業のプロモーションキャラクター等も含まれる」 (ウィキペデア)。
「ゆるキャラ」という名称は漫画家・エッセイストであるみうらじゅんが考案したとされ、みうらじゅんも自分が命名者だと自認している。2006年にテレビ東京で放送された「TVチャンピオン ゆるキャラ日本一決定戦」では、冒頭で「ゆるキャラ3か条」というものが紹介されていた。彼が言うには、「ゆるキャラ」として認められるものは次の三条件を満たしていなければならない。「①郷土愛に満ち溢れた強いメッセージ性があること、②立ち居振る舞いが不安定かつユニークであること、③愛すべき、ゆるさ、を持ち合わせていることの三つである。」 (みうらじゅん、2006)
1.2ゆるキャラの目的
ゆるキャラの目的はいくつかあるが、主に「地域のPR効果」を挙げているところが多いようである。例えば、2011年のグランプリで優勝した「くまモン」はもともと、九州新幹線全線開業(2011年3月)に向け、熊本県が取り組んだPRキャンペーンのキャラクターとして生まれた。2014年11月現在、くまモンのツイッターフォロワー数は約35.2万人、ユーチューブ「くまモン体操」など再生回数は約265万回を超えている。くまモンの関連本もいくつか出版され、くまモンのグッズもいたるところで販売され、海外進出も順調に行っている。「2013年に発表した地方経済総合研究所による統計では「九州で最も印象に残る情報発信を行っている県」という質問に対して、熊本県は九州内では6位から2位、関西では6位から3位、首都圏では7位から5位へ上昇(2010年調査結果との比較)。また、熊本県への訪問頻度が増えたという回答が全体で10%増加、関西では23%増加しており、PR効果が出ている。」 (ウィキペデア)。
2.先行研究
地域活性化は、世界中どこの国でも重視される問題である。「地域活性化とは、地域が衰えた経済力や人々の意欲を向上させたり、人口を維持したり増やしたりするために行う諸活動のことである」。 地域活性化には、様々な方法があり、例えば、産業の創出・立てなおし、人口流出の歯止め・新規住民の呼び込み、都市開発、再開発などがあげられる。そのうち、ゆるキャラも一つの方法として活かされている。
秋月高太郎は「ゆるキャラ論序説」の中でゆるキャラと呼ばれているものの正体について、共時的かつ通時的な視点から明らかにし、さらにキャラクター論の視点から、キャラクターとしてのゆるキャラの位置付けについて考察した。ゆるキャラはただの「キャラ」ではなく、それぞれ、さまざまな「設定」が付与されている。身長、体重、性格、好き嫌い、特技など、詳細なプロフィールを持っている。
今までの主な「ゆるキャラ」についての研究は文化の面から行われているものが多いようだが、「ご当地キャラクター」(くまモンを除く)による地域への影響を詳しく研究しているものはまだ少ない。例えば、青木貞茂(2014)は、無表情な日本のキャラクターと人間的な欧米のキャラクターとの比較を通して、今のキャラクター・ブームを文化の深層にいたるレベルで考察し、日本社会の本質を語った。相原博之(2007)はキャラクターなしでは生きていけない日本を語り、キャラクターと日本人の強固な精神的絆を読み解いた。