22歳のとき、彼女は大学から卒業した。あと八年間、安房直子が恩師の山室静の児童文学の授業を聴講した。卒業したあと、同人誌『海賊』を始めた。そして、『海賊』に載せた『さんしょっ子』で一九七○年の日本児童文学協会新人賞を受賞した。それは童話作家としての出発であった。一九七三年、十編たまった童話『風と木の歌』は小学校文学賞を受賞した。それから十余年かん、いろいろ美しい童話を出版した。「花豆通信」は安房直子の世界を語り継ぐため開かれた花豆の会の報告を中心にした書物である。1999から2009まで十一年間には十一回の「花豆通信」を発行した。小西正保は第4 号の『花豆通信』のなかで安房直子の童話作品に対して、「逝って八年。彼女の書き遺した作品のいくつかは、60―80 年代の日本の児童文学世界に、ひときわ特異な足跡をいまなおとどめつづけている。「全集」こそまだ出ていないが、その幻想的でかつ不思議な世界は、多くの読者の心の中にしみこんでいる。 天折した宮澤賢治や新美南吉の童話が、あるいは芥川龍之介、有島武郎の書いた童話のいくつかが、今日なお読まれつづけているように、安房直子作品のいくつかは、これからも世代を越えて読者の胸を揺さぶるに違いない。」6と高度評価したことがある。この十一回の「花豆通信」をネットで読んだあと、安房直子の姿が目の前に生き生きとして現れた。「花豆通信」第8号7には安房直子の単行本で収録されない作品『きつねの灰皿』の一部抜粋がのった。安房直子はタバコが好きで、この作品にいかにも愛煙家の気持ちが分かるような書きぶりだった。それで、タバコを吸っている安房直子の姿を想像すれば、彼女の寂しさをもっと感じた。そして1993年に彼女は肺炎のため亡くなったのことを思い出すと、いっそう哀れになった。2.2作品紹介「鳥」(『風と木の歌』実業之日本社 1972.5)はそんなに有名な作品ではなく、この作品に関する資料はすごく少なかった。「鳥」は安房直子早期の作品、大学卒業後の同人誌「海賊」にのった。
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