2、グローバル・マーケティング背景とブランドの定義
2.1グローバル・マーケティングの潮流と顧客
マーケティングとは、市場に働きかけることであり、人間のニーズ(必要性)とウォンツ(欲求)を満たすために、潜在的な交換を現実のものとすることである。また、マーケティング・マネジメントとは、組織体がその目的達成のため、最終市場との間に相互に利益となる交換その他の関係を創造、構築、維持する計画について、分析、企画、実行、コントロールを行うことをいう。
今日、国際的経営活動を行っている企業のマーケティングは、“国際マーケティング”、“外国マーケティング”、“多国籍マーケティング”、“グローバル・マーケティング”などと呼ばれている。ここのグローバル・マーケティングという用語は、1980年代以後広く使用されるようになったといわれている。グローバル標準化の方向、すなわちグローバルに標準化重視の調整の方向は、国境を越えた経営の調整、統合の一つではあるがそれがすべてではない。
マーケティング・コンセプトとアメリカ資本主義マーケティング・コンセプトは、マーケティング行動の理念を意し、マーケティング・イデオロギーを内容としている。
その形成は1950年のアメリカに求められ、競争の激しい、主として消費財製造業界を中心にした、マーケティング活動を「消費者中心志向」として組織的に、総合的に展開するなかで進展し、今日にいたっている。たしかに、「消費者志向」や「消費者主権」、「消費者は王様である」とする議論は、すでに1930年代の世界恐慌の過程で強調されており、消費者をマーケティング活動の対象にすること自体は決して新しいことではない。しかし、戦後の「消費者中心志向」は明らかに質の異なった内容を持っている。それまでの技術論としてのマーケティングに、新しくイデオロギーとしての「消費者中心志向」が加わり、マーケティング・コンセプトとして形成、確立したのである。
2.2 ブランドの再定義
主要先進国における経済成長の鈍化は、多国籍企業の売上高を減少させ、利益を圧迫している。利益を確保するいくつかの方策として、リストラクチャリングやプライチェーン・マネジメントなどのコスト削減が実践されているものの、そのような方策のみで売上高増大という根本課題を解決することは難しい。ブランドは、このような当面の課題に寄与する要素の一つとして実務、研究の双方から長らく関心を集めている。
さらに近年、多国籍企業は多様化、広域化した事業を主体的に統制するため「グローバル・ブランド」に注目している。松浦祥子(2014)によると、グローバル・ブランドとは、主要先進国を中心として世界的に市場導入され、海外売上高比率が高く、さまざまな利害関係によって肯定的に評価された製品サービスの名称である。多国籍企業はさまざまな事業を所有しており、各事業において一定の評価を得ている特定製品ブランドの下に複数の製品をアンブレラ化させることが一般的になりつつある。また、各事業は国内や重要先進国のみならず、開発途上国でも展開することを念頭においている。ただし、多国籍企業の所有するすべての製品ブランドがグローバル・ブランドというわけではない。製品ブランドは、ローカルブランド、リージョナルブランド、そしてグローバル・ブランドに類型化され、それらの数には顕著な差がある。