1.1 刺身とは
日本は周囲を海に囲まれ、新鮮な魚介類が多く、魚を生で食べる料理が発達した。魚を生で食べると食材本来のが分かり、栄養も壊れない。刺身とは、魚介類等の生の食材を小片に切り、ワサビ・ショウガなどの薬を添えた醤油・酢噌などの調料に付けて食べる日本料理である 。刺身は魚そのもののが食べられる料理であり、食材に応じた切り方と盛り付けがある。 大根やわさびなどツマとして刺身に添えることが多い。
1.2 先行研究
本論文のために、様々な資料を調べてみた。刺身は生食の中で最も代表的な料理である。日本人は魚食民とよく自称している。長崎福三は「魚の生食は日本人の粋技であるが、これには鱠と刺身とがある」と述べた。原田信男は「生で食べると最も美しい」と指摘した。戦慧の『近代日本の食文化における西洋の受容』では魚介類を生で食べる膾と刺身は和式調理の特色であることなどについて論じた。
ところで、日本人の生食習慣はなぜ残っているのだろうか。万中英(2012)は『風土が醸出した日本の食文化』において、「魚も、日本近海には暖流と寒流の両方が流れているため、回遊魚の種類にも季節性があり、その上、豊富である」と述べている。万中英(2012)は生食する習慣の地理的原因も指摘している。和辻哲郎(1990)は『風土』において、「食物の生産に最も関係の深いのは風土である。人間は獣肉と魚肉のいずれを欲するかに従って牧畜が漁業かのいずれかを選んだというわけではない。風土的に牧畜か漁業かが決定されているゆえに、獣肉か魚肉かが欲しい欲せられるにいったのである。」と述べている。『風土』は、魚を生食する習慣の地理的原因を明らかにした。魚を生で食べると食中毒や寄生虫に感染する危険がある。合覚などは『生シラスの生食による感染が疑われたクジラ複殖門条虫症の1例』 で「生シラスのように新鮮かつ天然ものを丸ごと生食するような魚料理では,クジラ複殖門条虫をはじめとする海産性寄生虫の感染リスクがあることを知っておく必要があると思われる」と述べており、魚を生で食べると食中毒や寄生虫に感染する危険があることを明らかにした。しかし、刺身の未来に関する研究は少ない。
以上のように日本に魚介類を生食する習慣が残っている原因、魚介類を生食するにメリットとデメリットの研究が色々あるが、近年の環境汚染は生食文化と刺身への影響の将来展望についての論文は、筆者が調べた限り、見当たらない。
1.3本稿の目的と方法
生食や刺身に関連した文献や統計資料、インターネットや図書館などからデータを収集し、分析を行う。日本人の魚介類を生食する習慣が残っている原因、魚介類を生食するメリットとデメリット、刺身の将来の発展について考察する。この論文を通じて、日本の生食文化を理解した上で、近年の海洋汚染の生食文化、特に理解したへの衝撃を研究しようと思っている。
2.刺身
2.1 刺身の起源
生食習慣は人類の歴史とともに始まったが、人類が生存する環境に応じて、この習慣は或いは残り、或いは廃れていった。日本は海に囲まれて、4千余りの島からなる島国だ。だから昔から日本料理の食材は多くの新鮮な魚介類などであった。そして、日本には魚介類を生食する習慣が残った。刺身は即ち膾である。膾は細切りの生肉・生魚のことを指す。古代に、細切りの生肉と生魚に葱などの薬や酢をつけて食べていた。古代には調料として酢を使用するようになったことで、一般に膾は「生酢」と解されている。昔は調料は必ずしも酢とは限らなかった。刺身は伝統的な「なます」が発展したものである。刺身は昔から日本料理の中心的な存在であった。伝統的な割烹料理の献立は、まず何を刺身にするのかを決め、それに合わせ煮物や焼き物が決められていった。つまり刺身によって献立全体が左右される。日本では、膾、刺身、寿司、生卵は生食の非常に代表的な物である。本文は刺身を主として生食文化を研究する。