日本人は一般的に自分で酒を注がなくて、お互いに酒を注ぎ、乾杯する。ほかの人から酒を注いでもらう場合は、両手で杯を持って、注いでもらうのが正しい作法と考えられる。仕事が終わったあと、同僚と一緒に飲みに行き、上司から部下に酒を注ぐこともある。この中に、上司が部下に対する「ご苦労様」という意を含めている。また、部下は上司に酒を注ぐのは尊重の意である。これらの言葉と行動の意は飲み会をきっかけに、職場でのお互いのコミュニケーションを深めることができる。また、お互いに人と人の理解も深まり、集団意識も強められる。
「盃のやりとり」が日本における酒席での独特な礼儀である。「盃のやりとり」とは、「献杯」、「盃をうける」、「お流れ頂戴」などというものである。「献杯」とは目下から目上へ盃を献ずることであり、反対に「お流れ頂戴」とは目上から盃をいただくことを請求するときの言い方である。この習慣は、友人と同士、主人と客、上司と部下などが、酒そのものとその器である盃を通じて親しみを表現する日本の風習であると考えられる。徳利や銚子に日本酒を入れて、相手に丁寧に注いでやって、温かい心を伝えることができるとも言える。