4 神道の承継
4.1 すみれの花
『古都』の冒頭に美しい景色を描く。その中に、主人公が登場する。
「もみじ古木の幹に、すみれの花がひらいたのを、千重子は見つけた。」[8]
そのあと、すみれの花は小説に数多くに現す。春ごとにすみれの花をつけ、千重子はその二株の花を見ると、「ああ、今年も咲いた」[9]と、春の美しさに出会った。年ごろになった千重子は下のように思った。