1.2.2御霊に関する研究
更に、日中両国における御霊に関する研究も見てみよう。様々な研究資料を調べた結果、以下のようなものが挙げられる。
まず、御霊信仰については、諏訪(1988)は、「御霊信仰とは異常な死に方をした者の霊を恐れ、これを宥めてその祟りを逃れようとする信仰である。」と述べている。また、祖霊と御霊の区別として、「祖霊は幽霊の原型で、同族の先祖の霊であって、父や母や祖父母であっても社会的に公然と名を知られている存在ではない。つまり、祖霊は私的な存在である。他方、御霊は原則として血的な繋がりを越えた社会的、公的な存在である。」と述べている。
また、御霊の善悪についても研究が展開されている。阿部(1995)では、「大地震は幽霊のせいである。怨念は地に潜むと言ってよい。だからこそ邪馬台国がはじめて歴史に登場する紀元二世紀の初め、卑弥呼時代よりも百年も早い時代から、盛んに地鎮祭が行われ続けて来たのではなかったか」と述べ、御霊の悪の面を強調している。一方、高木(2006)では、「怨霊といい、御霊といい、それらは忌避されるべきであるかのように言われる。しかしそれらは、共同体の住人から隔離され、見えない場所に永遠に追放される類のものではない。国家安定のために利用しているのである。」と述べている。また、王(2005)は「1.日本のホラー映画に存在する幽霊は絶対的な善悪観がなくて、彼らに適合するルールがある。2.御霊というものは日本人の心理を映している。」という二つの結論を出した。
最後に、ホラー映画における御霊に関する代表的な研究は鲁(2012)がある。この研究では、「雨月物語」に出てきた御霊や怨霊の形象を分析し、作品に反映された日本人の御霊観を分析した。御霊観は現実世界を反映しているので、女性御霊の特徴は現世の原型に基づいて作られたものである。「男尊女卑」の思想はこの女性御霊を中心に日本人の御霊観の基盤となっているという結論を出した。
以上で述べたように、ホラー映画中の怨霊を分析する研究は多いとは言えない。また、鲁-优尔|文\论/文'网www.youerw.com(2012)の研究に対しても、ホラー映画に反映される日本人の御霊観は「男尊女卑」思想に基づく以外にはないのだろうかと疑問に思う。したがって、本論文では、日本のホラー映画の特徴、怨霊の復讐を含め、日本人の心理状態、あるいは御霊観について深く追求したい。
1.3 本稿の研究目的と方法
本論文は、「日本のホラー映画から見る日本人の御霊観——『呪怨』を例として」というテーマを設定し、まず、日本のホラー映画と日本人の御霊信仰を考察しながら、「呪怨」に出てきた怨霊を分析し、作品に反映された日本人の御霊観を考察し、御霊観に潜む日本人の民族心理论文网、考え方などについて検討する。
手順としてはまず、先行研究を調べ、まとめる。そして、日本のホラー映画についての論文、日本人の御霊観についての文献を調べ、日本のホラー映画から見る御霊観を分析する。最後に、御霊観、御霊信仰に見る日本人の精神的観念や民族心理を探る。