アジアにおける韓国の出国者数は年々増加傾向にあり、韓国市場には特に関西に人気が集まり、格安航空会社(LCC)を中心に空港路線も拡充された。また、観光庁の「平成26年訪日外国人消費動向調査」によると、韓国の訪日者の中では46%が2大都市圏のみを訪問しており、「首都圏のみ訪問」が18%を占め、「近畿圏のみ訪問」が27%を占める一方で、「首都圏と近畿圏のみ訪問」は1%にすぎなかった。訪問地タイプ別客層を見ると、「2大都市圏のみ訪問」は20代以下や個別手配の比率が高い。また、「2大都市圏のみ訪問」では滞在日数は4日から6日まで、「2大都市圏と地方訪問」では滞在日数7日間以上の比率が高い。そして、日本酒を飲むことと温泉に入ることが、韓国観光客の中で人気になっていた。(観光庁観光戦略課調査室,2015)
また、中国人観光客は、知名度の高い都市、特に中国と違うものを有するところを選好し、ショッピングを旅行活動の重要な一部として重視するという特徴を持っている。中国人観光客には、東京圏、大阪圏という大都市や富士山とその周辺という日本を代表する有名観光地が人気である。大阪や京都、奈良から富士山を通って東京や関東に至る周遊ルートは「ゴールデンルート」で、この路線は初めて日本を訪ねる中国人観光客に選ばれることが非常に多い。特に銀座、秋葉原、大阪の心斎橋などのショッピングができるところも大人気であった。また、お菓子、炊飯器、化粧品など日本製のものが中国人観光客に売れている。中国人観光客が家電量販店や百貨店、ドラッグストア、土産屋などで旺盛な購買意欲を見せつけるという姿は「爆買い」(注1)と形容された。
2015年における台湾の訪日旅行者はおよそ368万人で、過去最高を記録した。観光庁の「平成26年訪日外国人消費動向調査」での訪問地タイプ別比率によると、台湾では約半分が2大都市圏のみを訪問しており、「2大都市圏のみ訪問」は20代以下や個人旅行向けパッケージ商品、個別手配が多く、「2大都市圏と地方訪問」では来訪回数6回目以上である。また、宿泊先は東京や大阪を選ぶ人が多い。日本を訪ねる前に、ショッピングをしたり、繁華街の街歩きをしたり、自然や景勝地を観光したりすることを望んでいた人も多かった。
東南アジア、欧米からの外国人観光客も2大都市圏への訪問率が高い。観光庁の訪問地タイプ別客層の違いを見ると、「東南アジアは2大都市圏に滞在日数3日間以内や個別手配が高いが、欧米も2大都市圏に初来訪者が多く、『2大都市圏のみ訪問』は滞在日数14日以上が半分以上となった」。(観光庁観光戦略課調査室,2015)
1.2 大都市圏と地域の比較
近年、インバウンド数が増えてきたが、大都市圏及びゴールデンルート(東京国際空港―富士山―京都・大阪―関西国際空港)の周遊に集中しているだけで、地域はインバウンドの経済効果、文化効果などがあまり波及しなかった。
大都市圏と地域との訪日外国人観光客受け入れの現状を比較すると、大きな違いがある。まずはインバウンドの数である。大都市圏にはインバウンド数が集中しているが、地域にはインバウンド数が少ない。また、地域へ訪問する観光客は、団体ツアーより個人旅行の方が多い。逆にツアーでの旅行は大都市圏やゴールデンルートの方が多い。