2. 先行研究

2.1居酒屋の歴史

居酒屋を歴史研究の対象とすることには、重要な意義があると思われる。それは、単なる飲食文化の歴史というだけでなく、それに関する風習にまで及ぶからでもあり、また、当時の人々の人間関係の形成に重要な意味を持っていたからでもある。论文网

下田淳は『居酒屋の世界史』(講談社, 2011)で、居酒屋の歴史を述べている。下田淳はドイツ史を専門としながら、ヨーロッパに限らず、イスラム圏や中国・韓国、さらに日本にまで言及した。

また、飯野亮一は『居酒屋の誕生 : 江戸の呑みだおれ文化』(筑摩書房, 2014.8)の中で、居酒屋の成り立ちから、江戸時代の酒や肴の文化、庶民の生活など幅広く書いている。日本で酒が庶民の間で飲まれるようになるまでの歴史、その中で酒がどう売られていたか、肴がどう変化していったか、また酒の器がどう変わってきたかが書かれている。それは居酒屋誕生の歴史だけではなく、酒にまつわる興味深い日本の文化史だといえる。

2.2居酒屋の特徴

居酒屋は酒とつまみ以外に、何を提供しているのだろうか。それにほかの飲食店の違いは何だろうか。

マイクロモラスキーの著書である『日本の居酒屋文化 赤提灯の魅力を探る』では、有名な店やそこが提供する料理が紹介されている。著者は、立ち飲み屋に始まり、大衆酒場、焼き鳥屋、おでん屋、屋台、角打ち、小料理屋、大衆食堂など、和風の酒場を細かく分類し、それぞれの特徴を記し、細分化されていること自体が日本の呑み屋文化の特徴だとする。

森下賢一の『居酒屋礼讃』(筑摩書房, 2008.12)は、江戸時代から始まった日本の居酒屋の文化史や、古代エジプト、中国の居酒屋からロンドンのパブまで古今東西の居酒屋文化を研究している。また、居酒屋の楽しみ、居酒屋の酒と肴も紹介している。文献综述

『完本・居酒屋大全』(小学館, 1998)で、太田和彦は「いい酒、いい人、いい肴」の三拍子を提出し、居酒屋には独特の空気、特殊な空間が存在するという。その著書では、正しい居酒屋とは何かという、居酒屋の人間生態学が書いてある。中でも酒と心理学や文化人類学は参考にする価値がある。

2.3居酒屋文化

居酒屋文化といえば、日本人の酒文化と言ってよいだろう。

小泉武夫の『日本酒ルネッサンス 民族の酒の浪漫を求めて』(中央公論社刊,1992)では、日本酒と器、酒と肴、日本人の酔態、酒と社交と人、居酒屋の成立などが紹介されている。日常生活における酒の嗜み方や考え方は、日本の文化を作り上げる上で少なからず影響を及ぼしてきたので、その周辺についても触れられている。誕生から葬儀に至る間の数々の人生儀礼を通して、日本人が日本酒といかに係わりを持ってきたかについて述べている。酒というのは飲んで、酔うだけのものではなく、社会的な「けじめ付け」の手段としても役立ってきたことも論じた。

また、吉澤淑は『酒の文化誌』(丸善株式会社 1991)で、酒の日本史、酒杯と容器、酒の飲み方、現代の酒などを紹介している。また、居酒屋でいつも見られる清酒、ビール、ワインなど様々な酒を評価し、主に清酒の酒質と料理の相性を説明する。日本人の飲酒の特徴の一つである集団飲酒は、古くからの伝統であることが知られている。集団の連帯の絆を確かめ、より強固にするために酒宴を開く。このような宴会は現在では職場の忘年会や学生のコンパなどにその面影が窺える。現在の日本の飲酒の特徴は消費の停滞、酒の多様化、国際化、飲酒パターンの多様化や若者、婦人の飲酒層の広がり、更には、飲酒目的や酒の意義が多様化に分化するなど大きく変化しており、新しい飲酒層を中心に、新たな飲酒習慣が作り出されつつある。

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