中国では、妖精や精霊、精怪といった言葉が日本の「妖怪」に近い言葉として用いられている。ほかに、妖鬼・妖魔・妖霊・妖厲などの語がある。今の中国の書物『循史伝』に「久之、宮中数有妖恠、王以問遂、遂以為有大憂、宮室将空」という記述があり、この中の「妖恠」は妖怪という意味として使われている。
3.古典文学に描かれる女性のイメージの変化
女性は、社会のなくてはならない構成部分である。女怪というようなイメージの現しは決して偶然ではない。そのため、ここでは中日古典文学に描かれる女性のイメージの変化を説明したい。まずは長い母系社会から奈良時代まで十代八帝の支配から、平安時代に至ると、女性文学は輝き、女性は尊敬されていた。ところが、平安時代の末期から、女性の地位は大幅に変化した。女性は支配的地位を失い、男性に従属するようになった。中日の歴史からみると、女性のイメージの変遷過程はほぼ同じである。まずは、日本の女性イメージの変化の過程を詳しく説明する。
3.1 日本
3.1.1 神
まず、最初に述べるのは、天地開闢において神世七代の最後の兄であり夫の伊邪那岐命とともに生まれた女神の伊邪那美命である。国産み・神産みにおいて、伊邪那岐命との間に日本国土を形づくる多数の子をもうける。その中には淡路島・隠岐島からはじまり、やがて日本列島を生み、更に山、海などの森羅万象の神々を生んだ。この時、女神としての伊邪那美命は、ほぼ男性と同じ地位についており、「大地の母」と言える存在と言っても過言ではない。
そして伊邪那美命と伊邪那岐命から生まれた神々の中の一人が、天照大神(「日本書記」)である。天照大神は、日本の神の中で最高神の地位を占める神で、太陽の神であり、高天原の主宰神である。ここで注意すべきであるのは、この太陽の神の性別である。皇室の祖神で、神道の主神と尊ばれる太陽の神は女性である。確かに天照大神の性別について、男性神説を取る人々もいるが、様々な証拠から見ると、現在ではやはり女性神説がより信用できる。またもともと日本は農耕民族で女系社会なので、最高神が女性神であるのはむしろ自然なことではないか。
3.1.2 半分神半分人
『日本書紀』と『古事記』の中の女性は、まだこの上ない神の身分を持っているが、その後出てきた様々な怪談文学作品のでは、女神たちは神としての性質を弱められ、その変わりに、人間らしい感情が付けられた。彼女たちは天の宮殿から下界に下り、半分凡人として世の中で暮らしている。中でも、最も有名なのが『竹取物語』②が書き記すかぐや姫の話である。それは翁夫婦に育てられた少女かぐや姫を巡る奇譚である。かぐや姫は五人の貴公子から求婚を受けるもこれを退け、帝から召し出されても応じず、八月の満月の夜に「月の都」へ帰る。かぐや姫自身は元々天女で、凡人の男子に対して、いつも傲慢な態度をとっている。ところが、長時間俗世間で生活している彼女は、人間らしい喜怒哀楽と悩みも持っている。そういうことから見ると、かぐや姫は神様と凡人、両方ともの性質を持っているのではないか。そして、このある美人を中心に、複数の男性が次々に登場するという物語の構造はある意味で、父権制の強化を反映する。