「大世界」に入った。「大世界」の雰囲気は「私」に合わなかったようで、むしろ逆にもっと寂しい 気がした。

在外の官吏としての性質上単なる職業意識以上のある種のイデオロギーを否応なし背負われると いう点で、「私」はいつも仮面をかぶっていた。その仮面は夜官舎の私室にあっても、完全に剥奪さ れているわけではなかった。そういう意味では「私」があらゆる仮面を振り落として天真の「私」に 帰っているのはおそらく桂英との密事にふけっている瞬間だけであったのであろう。「私」がどうに かその領事館生活に堪え得たのは桂英の存在のためということが気になり、桂英ともっと親しくなっ た。

その後、桂英は肺炎を冒した。顔がやつれた桂英を見て、心配していた。やっと桂英は熱が下がっ文献综述

た時、「私」は何者かに感謝したい気持ちでいっぱいにされていた。このことから見ると、「私」が弱 者への思いやりを持ったということがわかった。「私」は肉体的な欲求から解放せられ、精神で彼女

を愛していた。それは個人的な愛を超えたということである。と同時に、戦争は杭州へすでに肉薄し ていた。軍閥の私欲に基づく内乱に民衆が虐げ

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