2。2指示詞の誤用に関する先行研究
何(2010)では、指示詞の使い分けについて初級段階の一年生38人を対象にアンケート調査を行った。その結果として、①非現場指示に関する誤用が目立つ(その原因は対話型の「こ」と「あ」が間違いやすい)②現場指示の融合型の誤用も多い(物事と話し手と聞き手の位置関係は明確していない)の二点が挙げられている。その誤用の原因について、何(2010)は母語の干渉・教科書の漏れ・教師と学生の疎かの三つだと述べた。
母語の干渉というと、中日指示詞の非対称性が主要な原因だと考えられる。これに関する先行研究はまえに列挙したため、ここで贅言を要しない。
教科書の漏れについて、高(2007)は「教科書では現場指示用法は取り上げられており、解説もある。それに対して、非現場指示用法は取り上げられてはいるが解説がなされていない。」と述べた。教科書は、以下の教科書を取り上げている。『新編日本語1-4』と『日本語』5~6、『新編日本語』1~4 は各課が本文と会話文と応用文になっている。『日本語』5~6は各課が本文だけになっている。まとめると、次の2点になる。①教科書での非現場指示用法は取り上げられてはいるが、解説がなされいない。②学習レベルが高くなるに連れて、指示詞「こ」「そ」「あ」の非現場指示用法の使用数が増加する。文献综述
この点について、殷(2012)も「教科書は非現場指示の用法に具体的で、系統立った解説がないので、学習者の非現場指示に関する知識が足りなく、誤用を誘導しやすい。」と指摘している。
殷(2012)はコーパスにより、中国初級日本語学習者の指示詞の誤用を研究した。日本語学科一年生の一年間合計八回の作文をデータとして、初級日本語学習者の指示詞使用状況を分析し、その使用と誤用傾向を探った。データからは、学習者が指示詞の非現場指示を正しく使っていないことがわかった。初級前期の誤用は「こ」系と「あ」系の誤用が、初級後期は指示対象の不明確・指示詞の過剰と混同などの誤用率が高いという研究結果が出た。
安龍洙(2005)は「日本語学習者の非現場指示コソアの習得に関する研究-韓国人学習者と中国人学習者を比較して-」で、「全体として、学習者の母語と日本語に『ずれ』のある用法に関しては習得が特に困難であり、『母語の干渉』を強く受けていると推測される。」と書いている。
既往の研究では主に日本語学科の学生を対象とする研究であリ、日本語専攻ではない人たちへの研究という点では、不備があるように思われる。
本論文は日本語学科の学生だけではなく、興味や第二言語として日本語を学習していた人たちも対象として調査し、より広い範囲で日本語学習者の指示詞誤用傾向を分析したい。
3。 指示詞の非現場指示の誤用状況についてのアンケート調査及びその分析
3。1アンケート調査の方法来*自-优=尔,论:文+网www.youerw.com
筆者はまず市川保子(2012)の『日本語誤用辞典 外国人学習者の誤用から学ぶ日本語の意味用法と指導のポイント』での指示詞誤用例を整理した。分類していると、「こ→そ」(正解の「そ」を誤用の「こ」にしたという意味、以下同様)「こ→あ」「そ→こ」「あ→そ」という四つの種類に分けることが分かった。